Home > 総合 > ベルファストに

ベルファストに

  • 2012-08-27 (Mon) 04:56
  • 総合

null
 グラスゴーから列車とバスを乗り継いで南下、ケアンライアン(Cairnryan)という町に出た。そこの港からアイリッシュ海を渡るフェリーに乗ること約2時間半、英国・北アイルランドのベルファスト(Belfast)に到着した。北アイルランドは今も英国領であり、「グレートブリテン王国」(Great Britain)を構成する一部となっている。
 ベルファストを舞台にした作家や小説を紹介する予定はないが、南のアイルランドのダブリンを訪れる前に足を運んだ。ベルファストは1990年代のロンドン特派員時代に何度も訪れたことがある。北アイルランドは当時、親英のプロテスタント住民と反英のカトリック住民の確執が時に深刻化し、双方の住民グループが衝突していた。アイルランド共和軍(IRA)と呼ばれる反英のカトリック武闘組織のテロ活動も続いていた。
 IRAはその後、武闘闘争の終結を宣言し、北アイルランドの和平が実現した。プロテスタント、カトリック双方の政党が話し合いの場で共存を模索するようになっていることは、新聞報道などで承知していた。そうした現状を見てみたいと思い、フェリーに乗った次第だ。
null
 フェリーには九州で離島を訪問する際、何度か乗ったことがあるが、今回乗ったフェリーは昨年秋に就航したばかりとのことで、これまでに私が乗った中で最新の設備を備えていた。物珍しさから各階をうろうろしていたら、10階のフロアで係員の人が「スパがあります」としきりに言う。のぞくと噴流式の泡風呂だった。男女別のサウナも併設してある。ただし、トランクス(水着)が必要とのこと。今使っているトランクスがぼろ布になりつつあるので、新たに買い求め、利用することにした。サウナに入るのは今回の旅で初めて。サウナ大好きな私には嬉しい限りだったが、家族連れが多いからか、他に利用する人は皆無に近かった。
 リーと名乗る三十代の青年はそうした中、泡風呂とサウナで一緒になったただ一人の相客。リーは北アイルランドとの国境に近いアイルランドに住んでおり、パソコンのソフトウエアを扱う店を経営していて、24人の従業員を雇っているとか。
null
 「アイルランドの経済はヨーロッパの他国同様、思わしくない状況が続いている。正直あまり将来に希望が持てない。『ケルトの虎』ともてはやされた好況は昔の話。政治家も何をなすべきか理解していない。公務員があまりに厚遇されていることも問題の解決の妨げになっている。アイルランドには『アカウンタビリティー』(責任の所在を明らかにすること)が欠けている。アイルランドに比べれば、まだ北アイルランドの方が光が見える。事業をそのうちに北アイルランドに移すことを妻とは話し合っている。北アイルランドは和平の進展で、昔とは比較にならないような活気を呈している」
 リーはこう淡々と語っていた。私はベルファストで数日間、過ごす予定。その間に次の文学作品紹介に着手したい。ベルファストとは関係のない話だが。
 (写真は上から、乗船したフェリーから見えたアイリッシュ海。フェリーは北欧資本のようだった。レストランは賑わっていたが、泡風呂は閑散)

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

Home > 総合 > ベルファストに

Search
Feeds

Page Top