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ジョージ・オーウェル(George Orwell)④

  • 2012-08-18 (Sat) 07:42
  • 総合

 『動物農場』に戻ろう。ナポレオンを始めとする「特権階級」に属するブタたちはやがて、農場主が飲んでいた酒(ウイスキーやビール)の味を覚え、夜中に他の動物たちに隠れ、浮かれ騒ぐようになる。「七戒」の⑤に背く背徳行為だ。不審に思った他の動物が農場の建物の壁に大書された「七戒」を改めて見上げると、問題の⑤は単に “No animal shall drink alcohol” だったのが、“No animal shall drink alcohol to excess” と手を加えられていた。「飲み過ぎなければその限りではない」ということだ。私は思わず、笑ってしまった。
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 アニマルファームはその後、共和国となり、ナポレオンは満場一致で初代大統領に選出される。ナポレオンは他の家畜に向かい、「君たちの幸せは一生懸命汗水垂らして働き、質素に暮らすことだ」と説き、自分たちブタとボディーガード的な犬たち以外には貧しい生活を強いる。ある日のこと、ナポレオンたちブタの「圧政」に苦しみ続ける動物たちに衝撃が走る。それはブタが後ろ脚で立ち、人間のように歩いていたからだ。さらには人間のように衣服を身に付け、帽子を被り、タバコを吸っているブタも。「七戒」の①を真っ向から否定する由々しき事態だ。虐げられた動物たちが茫然自失とする中、ナポレオンが前足に鞭を持ちながら、「二足歩行」で現れる。
 ナポレオンたちはほどなく隣のフォックスウッドファームを営む人間の農場主と「対等」に付き合うようになる。フォックスウッドファームの農場主ら6人がある夜アニマルファームを訪れ、ナポレオンら6頭のブタと酒を酌み交わしながら、カードゲームに興じる。農場主は上機嫌でナポレオンたちの農場経営の手腕を称賛し、「人間であれ、ブタであれ、農場経営における問題は同じだ。人間はアニマルファームから大いに学ぶべきことがある」と持ち上げる。ナポレオンたちが他の家畜に満足な食糧を与えず、厳しい労働条件下で長時間こき使っていることを評価しての発言だ。農場主は言う。“If you have your lower animals to contend with,” he said, “we have our lower classes!”(「あなた方があなた方の下層の動物たちと対処しなくてはならないとするなら、我々も同様に我々の下層階級の問題を抱えています!」)。人間もブタもどっと笑いに包まれる。
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 屋敷の窓の外から彼らのやり取りを見ていた他の動物たちがすごすごと引き揚げようとしたその時、屋敷の中から怒号が聞こえてきたので再び取って返し、窓から中をのぞき込む。ずる賢い人間とブタのカードゲームだ。お互いに相手がいかさまをしたと罵り始めていた。総勢6人と6頭の言い争い。窓の外から見やる動物たちには彼らは皆同じように映った。屋敷の中で醜く言い争う人間もブタも区別がつかない顔に見えていたのだ・・・。
 この作品は1945年に発表され、オーウェルの作家としての名声を不動のものにする。彼は1936年に起きたスペイン内戦に反ファシストの立場から義勇兵として参戦するものの、ソ連共産党の欺瞞に失望。この経験から反共産党、反全体主義の考え方に変わる。『動物農場』が全体主義の欺瞞、愚かさや、さらには社会主義に代表される政治理念と現実との乖離を真っ向から批判した作品であることは容易に読み取れる。オーウェルは1950年1月、長く患っていた結核が悪化し、46歳の若さで死去する。
 (写真は上が、前項で紹介した見学会の休憩の光景。年配の参加者が目立った。私は若い方だったかも。下は、参加者がもらえたオーウェル夫妻の結婚証明書。「Erick Arthur Blair 33」歳、「Eileen O'Shaughnessy 30」歳と記してある。上の Banns of Marriage は「結婚予告」の告知。教会で挙式の予告を公示して、他の人々から異議の申し出がないことを確認するためにこのような告知がなされたのだという)

Comments:2

たかす 2012-08-19 (Sun) 04:01

「休憩」の写真。午後4時45分と時計が言っています。ここに集まった人たちは中上流会級の人たちでしょうから夕食は8時頃に取ったのでしょうね。労働者階級は71年頃、この時刻に取るのが「ティー」として夕食のことが普通だったようです。ホワイトカラーの人たちはお勤めのために早く起きますから「朝食」が内容充実。10時頃休憩のお茶でビスケット等もたべ、1時にランチ。2時から仕事で5時には帰って「サパー」か「ティー」。8時をすぎて夕食をとることはなかったと思いますが今はどうでしょう。知り合いの方の聞いてもらえません?

たかす 2012-08-20 (Mon) 04:21

イギリスの田舎がその姿を変える直前に君の訪英があるのかもしれません。先日知らせてくれたHaworthの美しい夏が、やがて風力発電の風車が林立するところになりそうだとのこと。今はブロンテ姉妹の文学遺産のおかげで観光をもとに生きている村が変わるかも。8月19日づけのデーリーテレグラフの紙面に写真と一緒に記事があります。ロンドンにはたくさんの時計が街中で見られました、71年のことです。その時計がほとんど止まっていました。いま街中の時計動いていますか?オリンピック競技がされたオリンピック・パークをt作ってイーストエンドを再生させたイギリスですが、ドーセットシャや西ヨークシャの景色がどのように変わっていくのか、期待と心配とのイギリスの田舎です。文章に写真にたくさん記録を残して下さい。

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