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ジョージ・オーウェル(George Orwell)②

  • 2012-08-16 (Thu) 06:36
  • 総合

 檄を飛ばした3日後にメジャーは永眠する。メジャーのメッセージは確実に農場の動物に「浸透」していく。「反乱」に向け、指導的立場に立ったのはブタの二頭で、一頭は「スノーボール」、もう一人は「ナポレオン」と呼ばれている。スノーボールは闊達で弁舌も巧み、創意に富む。ナポレオンは獰猛な顔付きをしており、口数も少なく、強持てタイプだ。どうやら、家畜の中ではブタが一番知能が高いようだ。
 それから3か月後、動物たちは農場主や従業員たちが怠慢で餌を与えられなかったことに不満を抱き、「決起」する。計画に基づいた反乱ではなかったが、農場主たちは農場から追い立てられてしまう。スノーボールたちは農場の名前も「アニマルファーム」と変更し、「モーセの十戒」ならぬ「七戒」が農場の建物の壁に大書される。①2本の脚で動くものは敵である②4本の脚で動くもの、羽のあるものは仲間である③衣服を着てはならぬ④ベッドで寝てはならぬ⑤酒を飲んではならぬ⑥お互いを殺し合ってはならぬ⑦動物は皆平等である、という「七戒」だ。
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 ブタが中心となってこの時までに、多くの家畜がある程度の読み書きができるように「教育」されており、他の動物たちはこの戒めを概ね理解する。だが、「七戒」の⑦は始めから怪しいもので、知能に長けたブタはすぐに自分たちの権益の確保に動き出す。ブタにとってミルクとリンゴが健康を保つ上で不可欠だと理屈をつけて、自分たちだけでこの二つの食糧を独占する。一方、追い立てられたジョーンズは農場を取り戻そうと他の農場の応援を得て、アニマルファームを襲う。しかし、スノーボールたちはこのことを十分承知しており、巧みに応戦して、人間たちを撃退する。
 ここまでは順風満帆だったが、問題があった。スノーボールとナポレオンの不仲だ。二人いや二頭の豚はことあるごとに衝突し、覇権を争う。ずる賢いナポレオンは農場で生まれたばかりの9匹の子犬を自分でこっそり育てて、手なずけていた。やがて大きく成長した9頭の犬はスノーボールに牙をむき、スノーボールは命からがら逃げ出す。ナポレオンは次々に自分に都合のいい方針を打ち出していく。狡猾なナポレオンの独壇場だ。「七戒」もなし崩しに無視されていき、遂にはナポレオンと彼に追随するブタたちは農場主の邸宅を住まいとし、ベッドで就寝するようになる。また、灯油や釘、犬用ビスケット、蹄鉄など農場では「生産」できない品々を求め、アニマルファームを立ち上げた時以来タブーとしてきた人間との「交易」を開始するまでになった。
 ナポレオンにはその後、“our Leader, Comrade Napoleon” という敬称が不可欠となり、例えば雌鶏(めんどり)であれば、“Under the guidance of our Leader, Comrade Napoleon, I have laid five eggs in six days.”(我々の指導者、ナポレオン同志のお導きにより、私はこの6日間で5個の卵を産むことができました)などと崇めたてられる存在となった。どこかの国で今も目にする表現のようだ。
 (写真は、以前に紹介したドーセット州の農場で目にした家畜のブタ。農場主のイアンはとても賢いブタだと語っていた。『動物農園』とは直接の関係がない話だが)

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