- 2012-02-15 (Wed) 07:38
- ミステリーな毎日
(真相部分には触れませんが、『奇面館の殺人』のあらすじを紹介しますので、未読の方はご注意ください。)
この真相は見抜けませんでした。
自分と瓜二つの作家・日向から主人公・鹿谷門実(ししやかどみ)は、自分の代わりにある催しに参加するよう依頼を受けます。その催しが開かれる場所は奇面館。招待客は仮面をつけ、同じく仮面をつけた主人とひとりひとり対面するという儀式が行われました。主人の目的は、もうひとりの自分を探すということです。その夜、招待客全員は寝ている間に鍵のついた脱げない仮面をつけられ(おそらくは全員睡眠薬を飲まされていた)、主人の部屋からは首と指が切断された死体が発見されます。
私のたてた推理は、こうでした(一応)。ある兆候を見出したことによって、文字通りの「もうひとりの自分」を発見した主人は、相手を殺害し、その「もうひとりの自分」になりすました。主人は、ある精神的な病を抱えており、それは自分が別人になったと自覚しないかぎりは、外の世界に出られないというものであった。首は指とともに、挽肉用ミキサーによって破壊されていた、というものでした(見事に、はずれましたが・・・)。
鹿谷は、ぜんぜん違ったこだわりから推理を展開していきました(ネタばらしにもつながりかねませんので、その「こだわり」は書けませんが・・・)。そして、それまでまったく発見されなかった別次元の秘密を見抜きます。読者に明かされていない秘密があるミステリーは、しばしばアンフェアな印象を与えるものですが、この作品における鹿島の「こだわり」は多くの読者に共感を与えるものなので、この真相には納得してしまいました。何よりも「館シリーズ」が復活したことを喜ばしく感じます。
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