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トランプの家

『だまされたコロンボ』について

(「新・刑事コロンボ」シリーズの『だまされたコロンボ』の結末部分に触れますのでご注意ください。)
2011年、刑事コロンボを演じていた名優ピーターフォークが亡くなりました。そのこともあり新・旧「刑事コロンボ」シリーズ全作品がブルー・レイBOXで発売されています。今まで商品化されてこなかった新シリーズの作品について言及していきたいと思います。まずは『だまされたコロンボ』です。
犯人が名探偵の能力を逆利用するという設定は、クリスティーやクィーンの古典的なミステリーにもみられたもので、ある人間が他の人間を操作する「操り(あやつり)」の問題として論じられたこともありました。このコロンボ・シリーズの新機軸に「操り」の問題が登場してきたことは、実に興味深いことです。
この「操り」を導入した犯罪においては、犯人も刑事(名探偵役)の能力だのみで、たとえば飛行場のモニターに映っている女性がコーヒーにクリームを入れている映像を発見するというようなことだけでも、探偵側にかなりの観察眼が備わっていなければならないということになります。犯人がしのばせておいた細かな仕掛けを見逃してしまう程度の探偵役しか登場しないのならば、このような犯罪は成り立たないのです。
実は犯人が狙いをつけてくるような優秀なコロンボにも弱点はあります。それは謙虚すぎるがゆえに、自分の能力を利用して犯罪を成立させる人間がいようとは想像できないことです。その点、自分が有名であることを少しも疑わず、自身の知力が世界最高であると悪びれず吹聴するエルキュール・ポアロの方が、この手の犯人の存在に気がつきやすいのかもしれません。
さて、捜査中のコロンボはどの程度まで自分の推理に確信をもっているのでしょうか。あるいは自身の判断を相対化し出した結論を修正するということはないのでしょうか。富豪ハリー・マシューズからダイアン・ハンターの捜査を依頼されたときのコロンボは、まだ事件性に対して疑いをもっていましたが、市長から犯行の実在性を問いただされたときの彼は、死体や共犯者の存在を断言しています。しかしコロンボのことです。表面的には屋敷のどこかから死体が出てくることを期待しているふりをしながら、たとえば穴を掘ることで『パイルD―3の壁』のときのような作戦を練っていた可能性もありますし、容疑者の婚約者にアプローチすることで『殺人処方箋』とときのような戦略をたてていたのかもしれません。「郵便配達は二度ベルをならす」という格言がありますが、だまされたとわかったコロンボも心のどこかで事件が再発することや容疑者の愛情が破綻することを予感していたと想像することはできます。
一度めの犯行と比較して二度めの犯行は犯人の事後処理がはるかに雑です(『構想の死角』を思い出しますが・・・)。やはり、共犯者ダイアンが不在だったことや突発的に事件が起こってしまったことが関連しているのでしょう。もしショーン・ブラントリーが最初から二度めの犯行まで計画していたのだとすれば、コロンボたち警察側は彼を逮捕することができなかったと考えられます(一度無罪になった者は二度起訴されることはないという裁判の慣習を利用した犯罪を描いた有名な推理小説もあります)。名刑事や名探偵は常に巨大な犯人から挑戦を受ける危険性と常に向きあっているのです。
二度めの犯行が行われたと聞いたコロンボは、臆することなく愛車プジョーを現場に向かって走らせています。やはり、彼が犯罪を分析していくのは従来の観察や推測によってです。一度大きな失敗をしたからといって、不必要に落ち込んだり臆病になったりせずに、従来の手法によってやり直していこうとするコロンボの姿をみることができます。
 

旧シリーズ最終作(第45作)「謀略の結末」ー刑事コロンボ

 最終作の犯人は、何とテロリストでした。
 敵はテロ用の武器を持っています。
 それに対してコロンボは、プジョー一台で対抗します。このボロ車を走らせて、敵を追いかけるコロンボの姿が、最終回にふさわしく感動的でした。
 本当にコロンボにふさわしい最後のドラマです。
 

第44作「攻撃命令」ー刑事コロンボ

 旧コロンボ・シリーズは、犯人が用いる殺害方法がユニークでした。
 闘牛の牛に殺させるというものもありましたが、犬を使うとは、これまた驚きです。
 この犬を仕掛ける言葉として、ある名作映画のある有名なセリフが登場するのですが、
映画通のコロンボが、そのセリフに気がつかないのも不思議な気がしました。
 コロンボの映画の好みには、かなりの偏向があったのでしょうか。
 

第43作「秒読みの殺人」-刑事コロンボ

 第43作は異色作でした。
 いきなり冒頭でコロンボが怪我を負います。
 サスペンスというよりも、一人の女性の破滅譚と見たほうが面白く感じられました。
 純文学的なコロンボといったところでしょうか。
 

 

第42作「美食の報酬」-刑事コロンボ

 監督が「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミなだけに期待していたのですが、凶器の扱いに不鮮明なところがありました。少し残念。
 近年売れた日本のミステリーの中にも、これと似たような凶器の使い方がありました。そこにまで影響を与えているとすれば、やはり「刑事コロンボ」は偉大であるということにはなりますが・・・。

第41作「死者のメッセージ」-刑事コロンボ

 今回の犯人は老女流作家です。
 どことなくアガサ・クリスティーを連想させます。
 そういえば、女流作家が犯人という話、古畑任三郎にもあったような。金庫に閉じ込めるという話も古畑任三郎にありましたよね。その他、随所に古畑任三郎への影響が見出せて、楽しめる作品でございます。

「殺しの序曲」-刑事コロンボ

 いよいよ第40作まで来ました。「殺しの序曲」です。
 非常にIQの高い天才的犯罪者との対決。最後にはコロンボが、自身の来歴を語る場面もあり、初めて見たときには、これぞコロンボの本質と感動したものです。
 しかし、あらためて考えてみれば、コロンボ本人はクイズの答えを「カミさん」に教えてもらってますし、トリックも他のIQメンバーに解明してもらっています。最後のクイズに正解できたのも偶々だとすると、このオジさん、かぎりなく怪しいということになってしまいます。
 

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