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February 2008

ドラマのバートラム・ホテル

 今日はアガサ・クリスティーのマープルもの『バートラム・ホテルにて』のドラマを観ました。
 途中、ホテルの滞在客にレッドベターなる人物が出てきますが、同名の人物はポアロ・ドラマ『満潮に乗って』の宿屋の滞在客にもいました。制作者達が遊んだのでしょうか。
 そういえば『バートラム・ホテル』の原作には裏事情を知るロビンソン氏なる人物が出ていましたが、この謎の人物はポアロもの『鳩の中の猫』にも登場していました。
 クリスティー作品は、このような人物探しをして遊ぶこともできるのです。また見つけて発表していきます

ポアロものの最高傑作!?

 残るは第37巻『葬儀を終えて』です。
 この原作はクリスティーの人気作品ベスト10に入るほど評価の高い作品です。
 葬儀の後、コーラは「リチャードは殺されたんでしょう」という謎の言葉を残します。そして翌日コーラは何者かによって殺されてしまいました。捜査は当然その言葉の解明に向かうのですが・・・
 後期になるほどクリスティー作品は人間ドラマ重視型に変わってゆくのですが、その中にあって奇抜なトリックと意外な犯人というミステリーならでは楽しみで群を抜いている作品です。
 ハヤカワ文庫の冒頭にはアパネシー家の系図が載っています。ヘレンの息子がジョージになっていたり、コーラと別れた夫が存命だったりと、やや設定が変えられていますが、この系図を見ながらドラマを観ると、さらにわかりやすく鑑賞できるでしょう。
 どの一言によってポアロは犯人の嘘を見破るか。やはりクリスティーはミステリーの女王です。葬儀を終えて (クリスティー文庫)

青列車、再び

 次に観たのはDVD第36巻『青列車の秘密』です。
 実は、これは短編作品「プリマス行き急行列車」の同工異曲で、しばしばアガサ・クリスティーは同じ題材を短編と長編(または中編)で書きわけて使っていました。
 すでに「プリマス行き急行列車」はドラマ化されています(第十三巻)。よって今回はキャサリン・グレイという、もう一人の主要登場人物に焦点を当て、話を膨らませています。
 このポワロ・ドラマのニューシーズンは基本的に原作に忠実なのですが、この作品は大きくアレンジされています。登場人物総てが関係付けられ、そのためにクライマックスは一同の前で真相が語られるというミステリーの王道が守られています。
 原作には、美術商パポポラスや情報屋ゴビーといった不思議な登場人物も出てきます。青列車の秘密 (クリスティ文庫)

人、それぞれに秘密あり

 続いてポアロ(ポワロ)新作DVD第38巻『ひらいたトランプ』を観ました。
 原作では、ポアロと女流探偵作家アドリアニ・オリヴァ夫人、それにバトル警視とレイス大佐の四人が共演するという設定になっておりましたが、後者二人はウィラード警視とヒューズ大佐に変わっています。
 トランプのゲーム中に殺人事件が起こるのですが、ポアロ一人が、そのゲームの経過と記憶を組み合わせるという、犯人解明のための明確な方法をとっています。
 容疑者も四人登場します。それぞれ過去に殺人を犯したかもしれないという秘密を持っているのです。その中の女性、アンやロリマーの末路が原作とは随分違っていました。
 オリヴァ夫人初登場です。原作の世界では、この夫人は後々も姿をあらわしていました。今後の活躍が楽しみです。ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ポアロ最新作DVD始動

 本日ポアロ(ポワロ)・ドラマの最新作DVD四巻が発売になりました。とりあえず今日は第39巻『満潮に乗って』を観てみました。
 一族の財産を専有してしまった若い未亡人と他の家族との確執、未亡人の兄の強欲ぶり、亡くなったはずの先夫の真偽などを軸に物語は展開していくのですが、なかなか原作は人間関係が複雑です。その辺はドラマになると、すっきりわかりやすく描かれいます。
 デビット・ハンター(未亡人の兄)の人物像は、ドラマの方がいやらしく描写されていました。
 少しポアロが調子に乗って失敗しかけるところが、この作品のミソです。また、ある重要人物の嘘をポアロは見抜くのですが、それが嘘だと判明した理由が原作とドラマでは違っています。リン・マーチモントの恋の顛末も違っており、ドラマの方は何となくモノ悲しい終わり方をしていました。
 このニュー・シーズンから従僕のジョージが登場しています。

満潮に乗って (ハヤカワ文庫 AC)

となりの列車に御用心

 次はアガサ・クリスティーのマープルもの『パディントン発4時50分』を読みました。マープルの友人が列車の中から、併走する列車での殺人を目撃してしまうところから始まり、死体消失の謎→死体隠し場所の捜査→死体身元の解明と話が進む中、連続殺人が起こるという二重三重の構成を楽しめる作品でした。食事の時は殺人の話はしないというマープルの気品がうかがえる場面もあります。
 ドラマはBBC版とグレナダ版の二種類があり、前者は二時間弱、後者は九十分強の長さなので、どちらかといえばBBC版の方が原作に忠実のようですが、重要なカレー中毒の話はグレナダ版でのみ描かれています。今回はマープルがルーシー・アイルズバロウという実に個性的な家政婦を派遣して事件の調査をさせるのですが、随分その女性像が違っていたりもします。また両ドラマともルーシーの恋の顛末の描き方が原作と違っていたりもしました。
 何と、この『パディントン発4時50分』にはアニメ版もあるのです。今度観てみたいと思います。パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

クリスティーDVD情報

 エルキュール・ポアロ(ポワロ)の海外ドラマ・ニュー・シーズンBOXⅡが来る2月22日にハピネット社から発売されます。
 収録作品は『葬儀を終えて』『青列車の謎』『ひらいたトランプ』『満潮にのって』の4作品です。

 またミス・マープルのTVドラマ・シリーズのDVDは二種類あることが判明しました。ジョー・ヒクスンがマープルを演じるBBC版全12巻以外に、ポアロと同じグレナダ配給のDVDが4巻出ています。
 作品は『牧師館の殺人』『予告殺人』『パディントン発4時50分』『書斎の死体』です。この二種類を見比べてみるのも面白いかもしれません。

葬儀を終えて (クリスティー文庫)

クリスティー『バートラム・ホテルにて』

 続いてクリスティーのマープルもの『バートラム・ホテルにて』を読了しました。この作品ミス・マープルは、あまり活躍しないものの、ともかくドラマ展開が面白いです。それほど評価されていない作品なのですが、読んでいてハラハラドキドキしました。
 今更ながらクリスティーの力量に感服。実の娘から身を隠す母親、その娘の冒険談、ある強盗団の事件、ある牧師の失踪、ホテルマンの銃撃事件など、複数の物語が錯綜していく展開が凄かったです。おまけにミステリ評論家・佳多山大地さんの後ろの解説が勉強になりました。
 クリスティーは、決してポアロとマープルを共演させようとしませんでしたが、何とアニメでこの二人が登場するシリーズがあるのです。これまたNHKで放映されて、現在はDVDになっています。とっても見てみたいのですが、まずはミス・マープルの実写版ドラマから見ていくことにします。ハイジのDVDも見なくっちゃ…。

バートラム・ホテルにて (クリスティ文庫)

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