- 2012-03-03 (Sat) 05:55
- うははシネマ専科
公開最終日。やっとクリント・イーストウッド監督作『J・エドガー』を観賞できました。
前作『ヒア・アフター』を観賞したのが、ちょうど一年前です。ひょっとしたら前作が遺作になると思っていただけに、再びイーストウッドの新作にお目にかかれたのは喜ばしいかぎりです。その前の『インビクタス』のときも、その前の前の『グラン・トリノ』のときも、ひょっとしたらこれが遺作という思いで観続けていたイーストウッドは1930年生まれ、くしくもジャン・リュック・ゴダールと同じ年で、当年83歳。
イーストウッド作品は、ずっとそう感じて観てきたのですが、この『J・エドガー』もただただ観られるためだけに創られた映画だと感じ入りました。若い頃のフーパーの陰影といい、リンドバーク事件のテンポといい、ホモ・セクシャルを描いたシーンの色合いといい、時間軸を無視するかのように描かれていく場面場面は、異質なものから異質なものへと無限に変容していくかのようです。それでいて映画全体に漂う統一感は損なわれていません。鑑賞者は、この映画のから「屈折した正義と使命感」や「歪んだ性愛の孤独」や「権力にとりつかれた男の幻想」など、それこそ無限にテーマをひきだすことは可能ですが、ただただ観ているだけで面白い映画とは、こんな映画だと思います。来年もイーストウッドの新作に出会えるのでしょうか。100歳を超えている世界最長老ポルトガルのマヌエル・ド・オリヴェイラ監督の境地を目指して新作を撮り続けていっていただきたいです。
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