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3月4日は・・・

 毎年3月4日は難波グランド花月にて「三枝まつり」が開催されます。今年は、桂三枝師匠が「文枝」師匠のお名前を襲名されるので、文字通り「最後の三枝まつり」となりました。「最後の」と銘打っていただけに、会場は大入り満員、例年以上の熱気に包まれていました。それ以上に私が感服いたしましたのは、師匠の落語が今まで以上の「新鮮さ」を感じさせてくださったことです。おそらく、この「鮮度」を保たれるのは容易なことではなかったと想像されます。「新鮮さ」というものは、目新しいことをしたからといって、あるいは、タイムリーな話題を取りあげたからといって、それだけで保たれるものではありません。
 おおまかな区分になってしまいますが、師匠の落語創作は、古典的な題材を現代的な風土に溶け込ませていくことと、現代的なセンスを古典的な形式に注ぎ込んでいくことの、二つの方向を目指されているようです。例えば、今回演じられた「お祭り代官行列」と「大相撲夢甚句」では、「祭り」・「相撲」という割合古典的な要素が現在の風潮につながっていくと同時に、登場してくるのは古典落語と同質の人間味に溢れるユニークな人物たちでした。
 ところが真に驚異的なのは、その二つの方向性を軸として普遍的な笑いのスタイルを確立されてきた師匠が、ご自身の創られてきた形を乗り越えていこうとされているところです。ひとつの壁を乗り越えて、新しい笑いを生み出していこうとされるエネルギーが本日はビンビンと伝わってきました。ここからもたらされるような「鮮度」がなかったら、古典芸能としての上方落語は衰退してしまっていたのではないかとさえ感じてしまいました。
  「文枝」師匠のお名前を襲名された後、どこを目指して行かれるのか。これからの師匠が、ますます楽しみです。
  
   

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