2010-01-11
『その夜、妻に最期のキスをした。』
マガジンハウスのメルマガを取っていて、そこで紹介されていたのが、この本でした。32歳という若さでがんになったこと。ブログにつづられていた闘病記が、夫婦2人で綴られていたこと。大学の講師となり、これから仕事をやっていこうとしていた矢先に肺がんとわかり、新聞記者の夫とともに、3年間の闘病生活を行ったことなどが、書かれていた。そして、何より、この本を読みたいと思ったのは、このタイトルと、書影にある、彼女のまっすぐな視線だった。この本は読まなければと思って、そこから何カ月かたち、やっと今日、読むことができた。最初の予感で感じたように、この本は、とても、心に残る一冊になった。内容はあらすじなどで知っていたにもかかわらず、何度も涙してしまったのは、やはり、彼女の生の声で綴られていた、とてもリアルなものだったからなのだろうと。年が近いうえに、最初にある彼女の経歴で、福岡出身と知って、ぐっと自分に近いものとなった。ブログに綴っていた彼女の声は、とてもリアルで、すっと自分の中に入ってきた。彼女の闘病の日々を追いかけ、途中から、夫の山口さんが書いたものが混じり始め、もう彼女が書くこともできないほどの状態になってしまったんだと思い、最後の章を読み進めることは、彼女の死に近づいていっているんだと思いながら、最後まで読みました。山口さんのあとがきの原稿を読んで、山口さんの、文野さんへの思いを感じました。そして、自分も「バウムクーヘンの輪」の中に加われたのではないかなと。闘病のつらさはきっと想像を絶するものだったと思う。その中でも、仕事に復帰したい、子供をいつかもちたいという夢をもち続けていた生き方には心を打たれた。この本を読みながら、『ゆりちかへ』の晃子さんのことを考えていた。晃子さんもきっと同じ思いを持っていたのかなと。少しでも長く生きて、ゆりあちゃんの記憶に残るように、そして、1秒でも長くそばにいたいと。本を読むことで、自分を見つめ、いろんなことを考えられる本って、ほんと貴重だと思う。『ゆりちかへ』もこれからも大事に、書店にずっと並べていきたいなと。必要な人の手に、こうやって届くように。