詩画集『あの子の影は黒いチビ猫』
小林あき
A5判変形、上製、オールカラー136ページ、スリーブ付き
定価:本体2500円+税
ISBN978-4-86385-375-1 C0092
装釘・本文レイアウト 小林あき+山本浩貴+h(いぬのせなか座)
猫電話
∞
紅葉で
真っ赤な外から
もどるのは大きな黒猫
∞
キッチンに立つ二本の足を
クネクネとめぐり
無限大の記号をえがき
∞
猫は
ダイヤル式の
電話機になる
∞
それを両手でもちあげる
胸のところで
リンリンと呼び出し音がなる
∞
シッポであった
受話器を耳にあてる
おぼえのある声
∞
「もしもし
書物庫を『魂の病院』という
修道院はそちらですか」
∞
答えるまえに
あいてが
番号ちがいに気づく
∞
切れた会話で思いだす
(少女のころの二行詩
…あの子の影は
黒いチビ猫…)
∞
タイトルは『星月夜』
きっと
今夜は星がきれい
∞
ケトルがゆげをだす
∞
床におく黒電話
∞
姿のもどった猫が
のびをする
ラジオ放送の朗読番組、小川未明や宮澤賢治の童話に耳を傾け、新聞の文化面の記事からは、おとなのさまざまな芸術運動を知った少女が、絵を描きながら過ごした日々。半世紀も前の少女時代の作品に、心の軌跡をたどる詩を添えた、深く清らかな魔法の詩画集。
【著者略歴】
小林あき
赤ん坊のとき東京大空襲あり。病気で小学校入学を遅らせたためベビーブーム世代と同級生になる。少女期に学習雑誌に詩を投稿。美術団体公募展出品。油絵個展-檜画廊・現代画廊など。子どものアトリエの経験談をつづった文がきっかけで日本臨床心理学会に出席。東ドイツをはじめフランス、北欧児童施設の見学ツアー参加-1982 年 国旅行の翌年 桂林風景を中心に個展-1987 年 イギリス最北端へ重度障害のある仲間をかこみグループ旅行-1996 年 高低のある戸建てからマンションへ 東京板橋区内を転居- 2004年 一年半後、母を亡くす。「詩をお書きなさい」と同人誌「孔雀船」に迎えられる。日本ワイルドライフ・アート協会 日本児童文学者協会* 現代詩集『時計草の咲く家』跋文・黒田三郎編集・大西和男 詩学社 1978 年 『古風なトランク』花神社 1981 年 『窃視15』私家版(印刷・待望社)1983 年
* 子どもたちのための詩集
●『ふしぎでかわいいモノがたり』跋文・小長谷清実、イラスト・著者 花神社 2002 年
●『ものいうランプ』銅版画・釣谷幸輝花神社 2007 年
* 児童文学
『パパにかママにか ハーモニカ』解説・藤田のぼる てらいんく 2010 年ほか