『千夜一夜の明くる朝』
小川ひろみ
A5判変形上製、144ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-341-6 C0092
詩
透明な積み木
透明な積み木を
重ねるように
見えないものを
積み上げていくことは
とてもむずかしい
そこに積み木があることを
いつしか忘れてしまって
手探りで探すときにはもう
それが本当にあったのかさえ
わからない
風が吹いて
背中が寒い夕方
いつだったか遠いむかし
わたしのそばに誰かがいて
風をさえぎってくれていたような気がする
その人の顔を思い出そうとしても
もう難しいのだけれど
その人と一緒に積み上げた積み木が
どこかにあったはずなのだけれど