『アンダンテ、休止符連れて』
山崎純治
四六判並製、96ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-334-8 C0092
詩
アンダンテ
柔らかい緑の森は
とある昼下がり
羊のように目を閉じた
枝葉はゆらいで
青い透明な音楽を
絡み合わせ
バッハのフーガのように
解き放っていた
ずっと昔から
深いところで
堆積されてきた記憶が
さまざまな音符となり
呼吸している
森はこうやって
与えられたものを
返してきた
そのとき
人は話すことを止め
黙って考えた
今までに起こったこと
これから起こること
いつしか
地球も大きく息づき
ゆっくり
揺られていた