- 2011-03-24 (Thu) 22:33
- 総合
悪戦苦闘の末、本日、「ブラックアフリカをさるく」というタイトルの本を脱稿した。この欄で記してきたブログを基にまとめた紀行本だ。もう少し上手に表現できるのではとか、あれこれ工夫の余地があるとは思うのだが、今の自分にはこれが精一杯か。これからようやく次のプロジェクトに向けて動き始めることができる。
刊行目前にして、東日本巨大地震が起き、実を言うと、がっくりきたことも事実だ。このような「遠い世界」の本など出していいのだろうかと思わないでもなかった。しかし、やはり、自分自身なりのアフリカ観をここらあたりできちんと一冊の本にしてまとめておきたかった。そのために旅をしたのだ。
何にもまして、アフリカの旅で知り合った人々が「ぜひ、自分たちの本当の姿を日本の人たちに伝えて欲しい」と強く訴えたことに勇気づけられていた。例えば、ナイジェリア・ラゴスで出会った女子大生のベケレボさん。ナイジェリア独立50周年を祝う手作りの記念祝賀行事の裏方で忙しくしていたが、彼女からは記念祝賀で作ったこれも手作りのノートをもらっていた。罫線の入った紙をホッチキスでとめただけの簡素なノートだが、取材帳として重宝した。今もまだ使っている。本当なら、豊かな国からの訪問者である私が彼女に取材に応じてくれたお礼に何かあげてしかるべきだったのに。
ブログでも紹介したが、彼女が語った言葉が忘れがたい。彼女の国では停電が茶飯事。夜は勉強をしたくても明かりがないからどうすることもできない。貧しい暮らしを余儀なくされていても、それでもくじけない。「私たちの国(ナイジェリア)で一週間暮らしてみれば、誰もが私たちの良さ、苦しくとも笑って未来に向かう強さを理解してもらえると思う」という言葉だ。
誤解を恐れずに言えば、私は曲がりなりにも、アフリカの動向をこの20年以上、見てきた日本のアフリカ・ウォッチャーの数少ない一人。べケレボさんのような若者の姿をぜひ日本の人たちに伝えたい、伝える責務があると思っている。
取材で知り合った人の中には、日本の読者のために日本語で書く本だと説明しても、本が完成したら自分のところにも送ってくれと言う人もいた。今回の東日本巨大地震が発生すると、そうした人たちの何人からは、私の身を案じるとともに、犠牲者の追悼、被災者・被災地域の一日も早い復興を祈るメールが届いた。こうしたメールにも後押しされた。
ナイジェリアの弁護士、アヨ・オベさんは週刊新聞紙上でコラムを書いており、そのコラムで東日本巨大地震のことを書いたとメールしてきた。「ナス、残念なことに、字数制限で、東日本の被災者の方々があれだけの災害に見舞われても、自制心や礼節を忘れることなく黙々と復興に向けて歩き出している、と書いた最後のパラが削られて紙面には載らなかった。実に残念」と嘆いていた。(彼女のコラムに関心のある方は以下がアドレスです)
(http://234next.com/csp/cms/sites/Next/Home/5684157-146/story.csp)
Comments:2
- mutsuo 2011-03-29 (Tue) 11:30
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脱稿おめでとう。刊本が楽しみじゃな。
千年に一度の巨大地震、巨大津波じゃったげなが。
でん、こんどは千年前にはねかった原発事故が重なっちょるし、
なんせ人口が何十倍かに膨れ上がっちょるわけじゃかいな、
人類が遭遇した未曾有の大災害て言わんにゃならんじゃろ。
そういう中でん、被災に会わんかった者の務めとして、
犠牲者の霊をなぐさめつつ被災地復興支援にあたりながら、
自分のやるべき日常を粛々とおくるのが大事じゃと思い方じゃ。
その点で、今回の脱稿はまことに偉大なことじゃと思います。
敬服を払います。
俺んあの3・11大震災以来、学校のことで大童の毎日じゃった。
東京でん、てげな学校が休校にしたり卒業式中止にしたりじゃったが、俺は震災直後の4日間を休校にしただけで、その分を取り戻すために年度修了式を繰り延べたりして、卒業式もすべてやりきった。
おっどんの毅然とした姿勢に、保護者も安心してくれたり、なによりも学校に通いたいと思うちょる子供に喜んでもらえたけんどん、ただ、その間は余震があったり放射能風評があったり、子供の安全にことのほか気をつかったわ。
てげにゃひんだれたけんどん、危機管理にあたる際の判断力じゃら決断力じゃら、ふだんかい考えちょったことがあったかい、でけたこつじゃと思うちょる。
そういえばよ、東北三陸海岸のような津波がたびたび訪れるところには、もう人は住まんほうがいいて言う専門家がおるげなが、日本でそれをやったら人が住むところがねなるがと俺は思うとよね。
それよか、現代の技術じゃから、それこそ、津波であっちこっちやられて跡形もねなったこの機会に、三陸海岸には全部、高さ20mぐらしのスーパー堤防を築いたら、千年後の人に、平成の人たちはようと考えてくれたなて感謝されると思うとじゃが。
今度ぶっこわれてしもうた堤防とは比較にならん高さと幅、強度をもったスーパー堤防を海岸全体に万里の長城のごつ築くとよ。
それはきっと百年二百年の計になると思うけんどん、ゼネコンじゃら土建業の人たちの力を総結集して築いたら、震災復興にもなるし、景気もようなるし、いいこっちゃがと思うとじゃけんどん、那須君、ジャーナリストとして提言してくれんや。
コンクリートから人へちゅうスローガンを口ずさむ人がおるが、やっぱコンクリートじゃらが人を守るちゅうこつをちった魂に入れて考えた方がよっぽど人間らしい考えじゃと俺は思うとよね。 - nasu 2011-03-29 (Tue) 22:23
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むっちゃん そうや、4日間の臨時休校だけで乗り切ったや。大変じゃったな。それにしても、原発はどうしようもないな。報道みとる限り、当面収束する可能性は皆無に近い感じやな。誰もはっきりとはそう言うとらんけど、そういうことじゃろ。「原子炉冷却」とかいうから、「熱いものはそのうちに冷えるやろ」と思うとったけど、永久に「冷やし続けなくてはいかん」ごたるばい。そして、その冷却方法が今のところ、真水をかけ続ける以外にないごたる。あいた口がふさがらんばい。現場で命がけで作業をしている人たちには最大限の敬意を表するけど、ほかに手立てはないのかと言わざるをえんばい。一日も早く奇跡的に一連の問題が収束するのを祈るわ。