- 2011-01-01 (Sat) 07:39
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これまでに話を聞いた中で強く印象に残っているのは、ジンバブエ人で農業経済学者のマンディ・ルクニ教授(57)だ。南アのヨハネスブルクでインタビューしたが、教授はアフリカ諸国の人々がかつての家族や村々などの「原点」に立ち返る大切さを訴えていた。
ルクニ教授は「アフリカ諸国はこれまで西洋化を絶対の理想として追い求め、家族、さらにはや村などのコミュニティーが子供を育んできた役割、人間が本来抱いていた自然への畏怖の念などを遅れたものとして切り捨ててきた。そこにアフリカの不幸の元凶があります」と語る。「アフリカでは今、わずか2000円程度の財布を狙って人を殺すことさえする若者がいる。アフリカの伝統社会では考えられなかったことです。なぜか。我々が代々受け継いできた家族や伝統、コミュニティーの価値観を打ち捨ててしまったからです」
だから、アフリカが必要としているのは、独立以来の西洋化だけを崇めてきた心構えを変えることだと教授は説く。海外の援助などで都市部に大きな官公庁のビルや公共施設を建てることではなく、アフリカ人のコミュニティーを根本から立て直すことだという。アフリカでは代々、子供たちは基本的価値観を家族やコミュニティーの中で教わってきたのであり、今多くの若者が仕事もなく、家族やコミュニティーとの一体感もなくさまよっている現状では、治安が悪くなるのは不可避との認識を教授は示した。
ルクニ教授は20年ほど前日本を初めて会議で訪れた時の思い出を語った。毎朝夕ホテルから会議場まで歩いて通ったが、どんなに夜が更けても何の不安も感じなかった。アフリカでは考えられないことであり、「私はその時、昔自分の村でも同じように自由に動き回っていたことを思い出しました。これが本当の現代化だと実感しました。つまり、アフリカで起きているのは現代化ではなく、西洋化だったのです」
「我々は西洋化を推進する中で農業をおろそかにするという間違いも犯しました。工業化を目指す余り、自分たちの食糧供給に大切な農業を無視した。これも日本を訪れた時、都市部でも田畑があり農業が営まれているのを目にして気づいたことです。私はそれまでアフリカが発展しないのはアフリカがいつまでもアフリカ的なものを引きずっているからだと考えていました。いや、そうではない。過去の文化、伝統を守りながら現代化は可能なんだ、そうすべきなんだと分かったんです」
ルクニ教授はアフリカを代表する農業経済学者だ。だが、自分自身の知識がアフリカの人々の暮らしを豊かにすることができなかったことを率直に認めた。「私は若い時は、自分の知識でアフリカに変革をもたらすことができると考えていました。それは間違った考え方でした。発展は学者が説く知識を現場の人々が体得して自らの血肉としない限り、やって来ないんです。我々はそのことに気づき始めています。今はたいしたことはありませんが、国際社会の中でアフリカの重要性が認識される時代が確実に到来すると私は確信しています。生物の多様性一つとっても、アフリカのような大陸は他にありません」
(写真は、アフリカの現代化は実は盲目的な西洋化だったと語るルクニ教授)
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Comments:3
- つねちゃん 2011-01-01 (Sat) 21:41
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省ちゃん 明けましておめでとうございます。
宮崎はこの冬、山あいは雪化粧です。こんな寒い日は
モツ鍋で一杯が最高ですね~! - 那須 2011-01-02 (Sun) 14:56
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恒さん いいですね。モツ鍋。持つ鍋は友と昔から言いますものね。ゴルフしたいですね。
- 文美 2011-01-02 (Sun) 20:55
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明けましておめでとうございます。
日本帰国準備中でしょうか?お見送りできませんが、元気でお帰りください。お世話になりました。