- 2010-12-30 (Thu) 03:44
- 総合
静岡県浜松市出身の水谷文美さんは北海道大学獣医学部を卒業後、アフリカのジンバブエに渡航。その後、英ケンブリッジ大学の大学院で野生動物と家畜の共生をテーマに研究してきた。ロルダイガ農場との関わりはその延長線上にある。
「家畜と野生動物は同じ草を食べますが、食べる部分が異なります。例えば、トムソンガゼルなどのガゼル種は草の丈が長いと食べられません。それで最初に長い丈の草はゼブラが食べ、続いて、バッファロー、牛が食べ、インパラ、ガゼル、羊などの順番です。だから、家畜と野生動物は共生できるんです。家畜がいる草原では野生動物の数が増えていっています。人間の経済活動、自然保護をそれとどう絡めていくか」
「私が今、考えているのは、農場周辺にある乾燥地帯の小規模農家の人々の暮らしを農場とともに向上させていくことです。ケニアは西部や中央部には肥沃な大地もありますが、国土の75%はここのような乾燥地帯です。乾燥地帯は人口が少ない地域ですので、これまで海外からも含め支援活動が希薄でした。だから、私はロルダイガ周辺の農家の暮らしを改善することは他の乾燥地域への波及効果が期待できると考えています」
さて、ロルダイガ農場の滞在もいよいよお仕舞いに近づいた。それでこの日はハインド夫妻が住んでいた母家に面した庭でバーベキューをご馳走になった。舌鼓を打つ前に、文美さんがもう一つ、興味深いところに案内しましょう、と車で30分ほどの距離にある岩山の洞窟に連れていってくれた。
ライオンやバッファローに出くわす心配がないわけではないので、銃を持った警備員に同行してもらって洞窟に。真っ先に見えたのは白い紋様だが、その下に赤茶色の紋様も見える。「地元の人たちは以前から知っていたのですが、2004年に専門家に調査してもらった結果分かったのは、赤茶色の幾何学的紋様は3500年前のものだったことです。狩猟採集民のピグミーが当時この一帯で暮らしていて、その後、遊牧民の黒人に追われてアフリカ大陸を南下したのではと考えられています」。ここにも有史以前のロマンがある。
バーベキューはラム肉だった。ドーパーと呼ばれる羊の肉だという。うまい。ラムと聞いていなければ、何の肉だか分からなかったかもしれない。農場が営んでいるゲストハウスに滞在しているスウェーデンからの夫妻もおいしそうに平らげていた。
この旅の最後に友人のロルダイガ農場を訪れたのは、アフリカにはこういう世界もありますと紹介したかったからだ。農場の一角に文美さんは英国の大学の助成金と私費で研究者用の仕事場兼宿泊所のコテッジを建てていた。私はこのコテッジに一人寝泊りしたが、深夜は近くでハイエナの鳴き声が聞こえてきた。どうせならあのライオンの鳴き声も聞けないものかと恐いくせに少し期待した。大自然に抱かれた忘れがたい数日間だった。
(写真は上から、家畜のラクダの群れとも遭遇。私を見て好奇心一杯の感じだった。私が滞在したコテッジ。洞窟の幾何学的紋様。ほぼ真ん中に紋様が見える。洞窟から草原を望む。ラム肉のバーベキュー。スウェーデンからの夫妻に給仕しているのが文美さん)
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Comments:2
- takenoです 2011-01-01 (Sat) 01:16
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那須さーん 元気で頑張ってますね。
日本時間「2011年明けましておめでとうございます。」今年もよろしくお願いします。
毎回その場に居る錯覚をおこすような記録と写真、人のつながりに感動。
素晴らしいなー。
南国南大隅町は、昨日(12月31日)から、私の記憶にない大雪に見舞われ、今も白雪が舞っており、我が家の屋根から「ドドーン」と音を立てて雪の塊が落ちてます。(このような気象もあるんですね。)
声を聞くのが楽しみでーす。 - nasu 2011-01-01 (Sat) 07:46
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竹野さん コメントありがとうございます。ナイロビは今新しい年がやってきたばかりで、ホテルの外はすごい音響です。これは今晩は眠れそうにないかもしれない。
南大隈町は大雪ですか。異常気象ですかね。寒い日本(九州)に帰るのは腰がひけそうです。3月に稲尾岳登山、また一緒にできたらいいですね。 那須