- 2010-11-19 (Fri) 05:21
- 総合
アフリカでもできるだけ昼飯を抜く生活を続けている。1日1食を長く実践している高校時代の先輩から3年前に「昼飯ぐらい食べなくても死にはしない」と勧められて以来、体重が気になる自身に課している食生活だ。最近は効果がうせてきたが。
ただ、こういう旅をしていれば、地元の人がどういうランチを食べているか気になるので、時々は朝飯を抜いてお昼時のレストランやカフェをのぞいている。ヨハネスブルクの中心部のオフィス街のカフェにお昼時に立ち寄ってみた。
ガラス越しに食べたいものを注文してプラスチックの容器に入れてもらい、レジで勘定を払うシステムのカフェだった。ピザやホットドッグもあったが、ライスが見えると、やはりそちらに目が行ってしまう。ライスに野菜のごった煮のようなものとビーフシチュー、サラダを一つの容器に盛ってもらう。ミネラルウォーターを含めて35ランド(約400円)を支払い、店の外の歩道に面したテーブル席を探した。あいにくすべて先客がいる。
中年の男性が一人だけ座ったテーブルには空いた席が二つある。「相席していいですか?」と声をかけると、「どうぞ」との返事。ランチの写真を撮り、食べ始めると男性が「観光ですか?」と尋ねてくる。「みたいなものです」と答え、会話がスタート。銀行に勤務しているという男性の語った話はこれまで出会った南ア人の中で最も悲観的なものだった。
「私は南アが民主化された翌年の1995年にカナダに移住しました。12年間向こうで働きましたが、天候に嫌気がさして3年前に帰国。積極的理由で帰国したわけではありません。自分は独身で子供もいない。家族がいたら、戻ってきませんでしたよ」
「カナダで暮らしていて、南アが良くなったのではという漠然とした思いがありました。ところが、帰国してみると、汚職まみれのこの国の状況は全然期待外れでした。我々白人には未来はありません。やがて黒人政権から追い出されるだけです。私は銀行業務のベテランですが、黒人政権には私のような白人を活用する意欲は全くありません。これからも白人の頭脳流出は続きますよ」
物静かに憤るこの男性はアフリカーンス語を母国語として育った白人。アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アの復活を望んでいるわけではない。ただ、過去16年の黒人政権の政治に大きな失望感を隠せないのだ。「今この国の最大の問題は二つ。治安の問題とBEEです。私は白人という理由だけで新しい仕事を探すのは大変です。もうそろそろ平等にすべきです」とも語った。BEEとはBlack Economic Empowerment(黒人経済強化策)と呼ばれる黒人など非白人を優遇した政府の雇用経済政策のことだ。「私は来年3月で60歳になります。あと5年ほど働いたら、治安のいい南のケープ州のどこかに越して暮らしたいと考えています。あくまで希望ですが」
男性の話に耳を傾けていたら、食欲もうせてしまった。おまけに食べても尽きないビーフの塊はあまりうまいとは言えず、途中でギブアップ。ご飯粒だけは何とか片付けた。
(写真は上が、カフェでウーンどれにしようかなと思案するお客。下が、私のランチ)