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ヨハネス点描

  • 2010-11-02 (Tue) 09:06
  • 総合

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 「ここは南アのニューヨークみたいなところなんだよ。良く来たね。いいことも悪いこともここで全部起きるんだよ」。ヨハネスブルクの中心街に隣接するヒルブロウ地区の露天の食堂でお茶を飲んでいた中年の黒人おばさん3人組が愉快そうに私に言った。
 「なるほど。いい表現だ。それで悪いことというのはどういうことなの?」と尋ねると、彼女たちは私の質問は意にも介さない風に自分たちの話題に戻った。
 ヨハネスの中心街に足を運んだ。幸い、ホテルが呼んでくれたタクシーの黒人運転手のメル氏は「昼間だったら、何の問題もない。俺が保証する。ヒルブロウだって、めったに行ったことのない人たちが危ない、危ないと言っているだけだ。俺はいつも車を走らせているからよく分かっている」と頼もしい言葉を発するではないか。
 ヨハネスの中心街は特派員時代には、南ア取材の際には常宿にしていた地区だ。新聞記者でも泊まれた高級ホテルがあった。日本食レストランも数軒あり、それも楽しみだった。人通りの多い通り沿いに常宿にしていた「カールトンホテル」という文字がビルの最上階に見えた。「あ、ここだ、ここだ」と懐かしい思いで車を降りた。しかし、どうも様子がおかしい。警備員の黒人の若者に尋ねると「ホテルはずっと閉まっているよ。いつからか?そんなこと知らないよ。俺は3年前からここで警備員しているけど、その時から今の状態だ」と怒ったように言う。
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 隣の「カールトンセンター」と呼ばれるショッピングモールにしばしたたずみ、行きかう人々を眺める。たまに白人の姿も見かけるが、圧倒的に黒人の人たちだ。20年前はどうだったか定かには覚えていないが、これだけ黒人の人たちが圧倒的に行きかっていた記憶はない。周辺の通りも圧倒的に黒人の姿ばかりだ。そばからメル氏が口をはさむ。「確かに白人はこの一帯から逃げ出したが、最近は彼らも戻り始めてきているよ。ほら、あそこを歩いているのは白人女性だろ」
 ヒルブロウにあるスーパーをのぞいて、責任者に治安の状況を尋ねた。「6、7年前が最悪だったかな。今はだいぶ良くなった。ヒルブロウは近年はジンバブエからの出稼ぎがすごく多いんだ。そのこともあってか、あまり物騒な事件は起きなくなった感じだ」と言う。
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 かつての中心街から北のサントン地区に車を走らせると、そこは大きく異なる世界だった。ヨーロッパの都市と遜色ない高級ブランドのお店やしゃれたレストランが並ぶショッピングモールに超高級ホテルがそびえ、海外からの観光客を含め、白人の姿が目立った。
 ただ、人間的な温もりを感じたのは、サントン地区ではなく、私のような「侵入者」をそう不思議がらずに受け入れてくれるヒルブロウの方だった。油断していると、持ち物をかっさらわれる危険がある地区であることは重々承知してのことだが。
 (写真は上から、カールトンセンターのショッピング街。賑わいはサントン地区をしのぐ印象だった。ヒルブロウの露天の食堂のお客さん。サントン地区にあるマンデラ氏のブロンズ像。94年の完成。観光客が喜んで記念写真を撮り合っていた)

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