- 2010-10-27 (Wed) 02:02
- 総合
今回はラゴスの最終日に訪ねた新聞社の編集局長とのインタビューを紹介したい。
「ネクスト」という名の新聞の編集局長のカダリア・アハメドさん。創設されてまだ2年ほどの若い新聞だ。アポイントメントを取り付けて教えられた場所にタクシーを走らせると、倉庫のような建物だった。新聞社が移って来るまで、実際平屋の倉庫だったのだ。
「ネクスト」を創設したのはナイジェリアでは著名なジャーナリストのデレ・オロジェデ氏。彼のメンターであったデラ・ギワ氏が軍政下の1986年に郵便爆弾テロで殺害された後、米国に難を逃れ、記者活動を続け、ルワンダ報道で2005年にはピュリッツアー賞を受賞。彼が帰国後の2008年に立ち上げたのが「ネクスト」だ。
カダリアさんはロンドンで長くBBCの放送記者として勤務していたが、3年前に家族を伴い帰国。カダリアさんの出自は北部のフラニ、夫は南西部のヨルバ。「ロンドンで生まれた子供たちは自分たちの母国のことを知らない。そのこともあって帰国を決意しました」とカダリアさんは語った。12歳の長男と9歳の長女の母親でもある。
帰国後、オロジェデ氏にヘッドハントされた。「新聞のことは全然知りませんでしたが、ネクストは新聞だけでなく、インターネット、携帯電話など多岐にわたるソフトに情報、ニュースを提供する目的で立ち上げられたのです。テレビにいた私は格好の人材と映ったようです」
「購読部数は平日のデイリーが1万部。日曜紙が1万7千部程度でしょうか。たいしたことないと思われるかもしれませんが、この国では最大購読部数の新聞でも4万程度です。でも私たちの新聞は政権トップなど影響力のある人々が読んでいることが購読者調査から分かっています。レイアウトも工夫しており、既存の新聞が追随してきました」
「ネクスト」のインターネット紙面は国内外から毎週40万件のヒットがあり、ナイジェリアでは一番だ。さらに、携帯電話での契約者に緊急ニュースの有料配信をするサービスを開始したばかりだが、これも順調に顧客が伸び続けている。
「単にソフトの拡大だけを目指しているのではありません。正確で信頼できる報道を社是としています。今夏、故人となった前大統領が脳障害で執務不能となっているという特種をいち早く報じたのも我々です」とカダリアさんは語った。
とはいえ、新聞産業が苦境にあるのはこの国も同じ。「ネットでのアクセスをいかに実際の利潤としていくのか。世界中のメディアの共通の課題ですが、それを考えているところです。国の将来に関して言えば、最近汚職で摘発された企業経営者が懲役刑を受けました。汚職の規模に比べればわずかな刑ですが、ナイジェリアではかつてなかったことです。我々の国も着実に変化しているんです」。別れ際、お子さんにどうぞとバッグに残っていたチョコレートを差し出すと、「あらいいんですか。私もチョコレート大好きです」と微笑んだ。
(写真は上が、輪転機の前でカダリアさん。印刷工場をやがて国内のあと2か所に増やす計画があるという。下が、橋の上からラゴスのビジネス街を望む。大都会の眺めだ)