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南ア経済

  • 2010-12-06 (Mon) 06:31
  • 総合

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 ヨハネスブルクに「南ア人種関係研究所」(SAIRR)というシンクタンクがある。南ア取材ではよくここを訪ねていた。今回の旅でも、このシンクタンクのセミナーが催されていたので、二度ほど足を運んで南アの政治・経済の現状について勉強させてもらった。
 経済に関するセミナーでは4人のエコノミストや大学教授らが卓見を披露。その内の一人、エコノミストのマイク・シュスラー氏の話は門外漢の私にも理解しやすいものだった。金やダイヤモンドなどの地下資源に恵まれ、アフリカ一の経済大国ながら、同氏は南ア経済がいびつであることを税収の面から次のように説明した。
 「南アは狭小な税収基盤にあえぐ国の一つです。人口約5千万人のこの国で納税登録をしている国民は590万人に過ぎません。さらに所得税にせよ法人税にせよ、この内、わずか130万人が税収の75%を担っています」
 シュスラー氏にもう少し話を聞きたくて、ヨハネス郊外ランドバーグにあるオフィスに足を運んだ。
 民主化から16年。南ア経済の一番の問題は何でしょうか。
「この国の成人人口は3200万人。それに対し、従業員を4人以上抱えている会社・商店・工場・事業所の数は30万1千。これでは足りません。どうやって就業の場を増やしていくのか。これが喫緊の課題です。政府は今後10年で500万人の雇用を創出すると言っているが、どうやってそれが可能なのかは明らかにしていません。労組団体も雇用の創出、賃上げの要求をしているが、どうやって可能なのかまでは語れない」
 どこかで、この国は働くよりも社会保障で暮らしていくことを欲する人が多いのが問題だという新聞記事を読んだ記憶があるのですが。
 「わが国の現在の就業者数は1300万人。これに対し、子育て、障害者、年金など何らかの社会保障を受けている人の数は1430万人に上ります。これでは国の財政がやっていけないことは説明するまでもないでしょう。社会保障費に上限を設ける一方、就業者を拡大する必要に迫られている次第です」
 「一つだけ強調して置きたいのですが、南アの大多数の人々は働くことを願っています。ただ、最近は気になる風潮を耳にすることも事実です。例えば、農場などで働いてきた季節労働者が以前のように働くことをいやがる。収入は減っても、ある程度の社会保障を手にできれば、そっちを選択するという風潮です。これはゆゆしき事態と言えます」
 ヨハネスで時々コーヒーを飲んでいたカフェで働くウエイトレスの黒人女性は「あたしの月の稼ぎは3500ランド(約3万9千円)程度。子供が二人いるけど、いい教育を受けさせることだけが夢だよ」と語っていた。こういう人がやる気をなくす社会にしてはいけないし、そうならないことを心から願う。
 (写真は、シュスラー氏。柔らかい表情にしたいから話し続けてと要望したら、こんなユーモラスな仕草をしてくれた。机の上には妻子と一緒の写真。ご家族ですかと尋ねると、そうです、結婚が遅かったもので、子供はまだ3歳ですと微笑んだ)

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