- 2010-11-06 (Sat) 08:09
- 総合
ヨハネスブルクのCBD(Central Business District)と呼ばれるビジネス街を歩いた。アパルトヘイト(人種隔離政策)崩壊後の治安の悪化から、企業やオフィスがCBDから北の郊外にあるサントン地区に移った話は先に書いた。それでも、やはり、CBDがヨハネスを象徴する存在であることに変わりはない。
今泊まっているのはCBDに近い地区にあるホテル。真新しいネルソン・マンデラ・ブリッジを渡り、ほぼ真っ直ぐ歩くと、世界的な巨大資源企業として知られるアングロアメリカン社や銀行などのオフィスビルが並ぶメインストリートに出た。鉱山開発の歴史を伝える遺物が通り沿いに展示してあり、鉱山業の先駆者の功績も英文で紹介している。CBDを再び人が憩える活気のある街にという意図がうかがえる。雰囲気のいいカフェもあり、ランチを食べるオフィスワーカーの姿も見える。同じCBDでも先に書いたカールトンセンターの周辺は黒人が圧倒的だったが、この通り沿いは白人の姿も結構目立つ。ヨーロッパの都市のオフィス街の印象だ。
歩いていたら、何やら、通りの向こうから歓声が聞こえてきた。近づいてみると、デモ行進の一団だった。黒人の若者たちでその数約200人。行進を止めては、歌いながら踊る。複雑な踊りではないのだが、彼らのダンスにはいつもなぜか引き付けられる。
カメラを向けると、笑顔が返ってくる。切実な感じは伝わってこない。見物していた中年男性が「パートタイムで働く若者たちが役所から解雇通告を受けたことに抗議しているんだ。それに、この国にはレイバー・ブローカーと呼ばれる就職仲介業者が雇用主と彼らとの間に介在していて、業者の存在が搾取につながっているとも訴えている」と説明してくれた。
「彼らは今のズマ政権にも彼が率いる与党のアフリカ民族会議(ANC)にも不満が一杯なんだ。思いは私も同じだよ。信じられるかい。ズマ大統領の一族はこの国で130に上る会社を経営していて、巨万の富を手にしているんだよ」
こちらの取材意図を知ると、この中年男性は近くを親切に案内してくれた。「ほら、この建物、以前はオフィスビルだったのだが、会社がサントンに越したんで、今は住民のアパートだ。あのビルも同じ」。結局、彼はパークステーションという名のアフリカ最大と言われる駅の構内まで連れていってくれた。私は正直ここまでは一人で来る勇気はない。道中、歩いている白人の姿は見かけなかった。
南ア国内各地への列車や国境を越えて走る長距離バスが発着するパークステーションの中は思った以上にきれいで近代的だった。外の喧騒を知らずにいきなりここに連れて来られたら、ヨハネスの真っ只中にいるとは思えなかったかもしれない。
(写真は上から、メインストリートにあるアングロアメリカン社。雇用継続を訴え踊る若者たち。パークステーションの駅構内外。駅構内にはファーストフッドのレストランもあった)